先日、映画「空飛ぶタイヤ」を観た足で、小説を買いました。
いままでは、映画は映画だけと思っていましたが、映画+小説の楽しさを初めて知ったのは、「空海」でした。
空海の場合、小説は全4巻あり、映画と小説は平行世界(パラレルワールド)で、ストーリ展開が全く違い、映画の知識があると、良い意味で大きく期待を裏切られました。
全く同じ作品でも、映画と小説。ものによっては、映画と漫画でそれぞれの味があるので二倍の時間たのしめます。
今回の空飛ぶタイヤは、上巻を読み終わった感想は、映画と小説が良い掛け算になってるとおもいました。
映画でのイメージ記憶が小説を読む際のイメージングを補完してくれ、小説での感情や動作の表現力が映画でそのまま演技されてるところにすごさを感じます。
映画と比べた小説の魅力
・小説が原点なだけに、映画では写しきれてないすべてがわかる。
・登場人物の心情は、小説からわかる。映画では、俳優さんの演技力のすごさで喜怒哀楽などわかりますが、さらに具体的な心情がわかるのが、小説だと思います。
・映画での動画や実写では簡単に行ってるしぐさでも、文章で表すのはむずかしいことがある。
仕事でも、自分で行うより、説明する方がはるかに難しいように。細やかで多彩な表現力は著者池井戸潤さんのすごさを感じます。
気づいた!
・独壇場✖ 独擅場〇
p.286にて小牧の独壇場だった。とありますが、「独壇場(どくだんじょう)」は「独擅場(どくせんじょう)」がもともと正しいとされています。
独擅場(どくせんじょう)の「擅(せん)」が誤読などにより「壇(だん)」が流行し、いつのまにか「独擅場」が一般的になってしまったようです。
映画との違い
・主人公赤松家族の子供は小説では、三兄弟。
・沢田(劇中ディーン・フジオカさん)は、彼女と同居してる。
・週刊潮流の記者、榎本は劇中小池栄子さんだが、小説では男性。
・群馬で同様の事故を起こした、野村陸運の手助けが手厚い。
などですが、上巻では、基本的なストーリ展開は同じでした。
逆に考えると、映画は2時間といういう時間的制約の中で、ここまで忠実に本編を再現してるのかと感心しました。
今回のテーマは、個人VS法人だと思います。
個人とは、一個人という、感情・理性・道徳の部分が強調されたものでした。
法人とは、血の通っていないような利益第一主義・コンプライアンス(世間体)という現実を表していると思います。
情に訴えかけられる赤松に対して、大企業ホープ自動車の官僚組織の弊害が情ではどうすることもできないという歯がゆさで、読み進めるほど主人公側に感情移入していきます。
そもそも
そもそも、この小説が出版されたのは2009年、2006年には刊行されていたそうです。
粉飾決算などにより内部統制監査(SOX法)が適用されたのが2008年度からです。つまり4月決算の多い日本企業では2009年3月決算から開始しています。
つまり、この小説が書かれたのは、内部統制といわれる「そもそも社内で不正があった場合、適時適切にその不正を発見して是正できるようになってるか?」という幹がしっかりと構えられていないような時期につくられていたようです。
経営者不正をはじめ、役員による不正を正すのは大変困難だとは思いますが、実際にはどのくらい大変なのか、どんな動きになるのか?という部分を現実離れせずに描いていることに気づき、とても感銘を受けました。
参考
zizaika.hatenablog.com
独壇場(どくだんじょう)は独擅場(どくせんじょう)の誤り!? | 文章の書き方