僕はいつものように、本屋さんに足を運びました。
その日も、興味のある本を探していました。
自分の中のルールで、1か月に10冊の本を読破することを目標としています。
本を選ぶルールは特になく、興味のあるジャンルを、好き嫌いせずにチャレンジしてみるということです。
自己啓発、伝記、脳科学、数学、小説、会計、様々なジャンルの本をその時のインスピレーションで購入し、読書していました。
今回のアンテナは、なぜかホラーに向いてしまいました。
その時、なぜこの本が目につき、興味を持ったのかはわかりません。
このことが、のちの恐怖のはじまりでした。
そうです。僕は、あまりホラーは得意ではないのです。
霊感はないですが、人間だれしも、化学や物理では証明できない、不思議な体験はしていると思います。
僕の場合は、
・小学校の下校途中で、鬼の形相で吼え、右眼球が零れ落ちている犬
・深夜の神社で蹴鞠遊びをする、着物姿のおかっぱ少女
というレベルです。
怨結び(えんむすび)
この小説のおもしろいところは、読み終わりにところどころ疑問の残る恐怖です。
実話怪談という趣旨で物語は進み、短~中編のオムニバス小説です。
いまの小説や物語は、いかに現実味を帯びているか、いかに矛盾なくリアリティを追求できるかというものです。
しかし、恐怖体験というのは、ところどころに謎の布石があるからこそ、怖いのだと思いました。
はじまりから、おわりまで、ところどころで現れる恐怖が、最後にすべて絡み合ってキレイに終わるのが、ミステリー小説・サスペンス小説の凄みだと思います。
この本の魅力は、ところどころに不可解な恐怖の点がプロットされるところにあります。
この「なぜ?」の未回収こそが、読み終わったあと、時間を置いたとしてもふと思い出し、恐怖の気持ちが沸いてくるのだと思います。
怖い番組を見た後、寝る前・トイレや浴室に入るときに、ふと思い出して怖くなる感じが満載です。
主人公であり作者のトシさんの恐怖体験は、不可解きわまりない謎の女性にストーカーされ、日々悩まされ、戦慄と恐怖を味わうというものです。
日記帳のように、1日、1日日付が進んでいくごとに恐怖が加速する「怨結び」は非情に怖いです。
また、当時はストーカー法がなく、警察は事件すら生じていないストーカーには何ら助けてくれなかったそうです。
生身の人間か霊かは問わず、ストーカーによる不安と恐怖に押しつぶされても、警察に助けを求められないというのは、逃げ場のない恐怖でしょう。
謎の言葉
そのほかの話でも、「謎の言葉」という話の、道端で特に火災・事故現場にいる、がっくり肩を落としてうつむいてる老人。見えることに気づくとばっと顔を受けてくるそうで、想像するだけでも怖いです。
実際に自分も見てしまうのではないか?というくらい身近で些細なところで心霊体験があったというのが・・・
不気味なビデオ
「不気味なビデオ」という話も後味の苦い展開で、ふと思い出します。
呪いのビデオネタなんてありふれてるけど・・・と思ってみてましたが、物語の始まりから恐怖体験までがキレイにまとまっていて、読んだ後にひゅーっと鳥肌が立ちました。
ふとTVのチャンネルをまわしていたら、本当にあった怖い番組がやっていた。
その時、特に普通に観ていたらちょっと不気味レベルの映像だったそうです。
しかし、作者は以前にその現物を見たことがあったらしいのですが、その怖い番組を観たことで、以前の出来事が、実は恐怖体験であったことに気づくという、「意味がわかると怖い過去の思い出」というのが新鮮でした。
誰しもが、日々様々な体験をしては、忘れていますが、その時の体験の真実が、実は数年後・数十年後にひも解かれるということは十分にあり得そうです。
特に、親からの愛情は、子供のころはわからなくても、自分がその立場になったときに、初めてわかるように、「意味が分かると、感謝の気持ちがいっぱいになる思い出」がある一方で、・・・
恐怖から学んだこと
・記憶に残るのは、完璧なことよりも、疑問の残ること
・キレイに完成されていない、ちぐはぐな出来事は人の心をひく