僕が公認会計士の勉強をしているときに、何かで耳にしたのが「複式簿記を初めて世に広めたのはルカ・パチョーリなんだって」ということでした。
もちろん試験では、会計学者でもあり数学者でもある人物で、世界で初めて複式簿記の理論体系を書籍として出版した人物は誰でしょう??
→はっ!・・ ルカ・パチョーリ!!
→正解!!
では、当該人物の有名な印刷文献はなんでしょう??
→うぅ・・・ 「ムスマ!!(算術、幾何、比及び比例全書)」!!
→正解!!
なんて問題はでませんが、なんとなくこの名前は知っていました。
そのルカ・パチョーリが会計の本を出したのは500年ほど前だそうですが、この人物からすべてが始まったのかなと思っていたら、ルカ・パチョーリが書籍としてまとめる遥か前から会計の歴史がスタートしたいたことが驚きでした。
現在日本では大きくわけてIFRS(国際財務報告基準)、USGAAP(米国会計基準)、JGAAP(日本会計基準)がありますが、そのすべての会計の始まりは、IFRSでおなじみのヨーロッパです。
そのヨーロッパの商人が貿易を行うことにより会計というものが誕生し、単純な家計簿レベル(単式簿記)から進歩させてきましたが、その後アメリカやアジアに輸入されて会計は時代、場所にあわせて過ちと進歩を繰り返して来たお話です。
かなり、読みごたえのある本で、はじめのうちはヨーロッパの歴史の知識すらないので、右から左へ抜けていくような印象でした。
それでも読み進めていくうちに、「会計の歴史」というより「会計をベースにした、人の心情と文化・文明の変化」に面白みを感じました。
この本自体で、会計の勉強が深まるかといわれたらうーんと思いますが、なぜ?どうして今の会計基準ができたのか?という好奇心が埋まることで、短期記憶から長期記憶へと移動すると思うので、雑学は完全には無駄にならないと思います。
感動ポイント
・会計は業績を数字として生々しく表します。当時のヨーロッパの国王たちは、良い業績のときは会計を讃え、業績が悪化すると会計というものの存在自体を物置の片隅にしまい込んでしまうような行動をとってきたそうです。
それにより、会計は進んでは、下がって、進んでは下がってをしてきたというのです。
会計は人間の心情をプラスの方にもマイナスの方にも乗算してしまうのだと思いました!
・宗教と会計の繋がりが面白い。
会計はお金に執着する。お金に汚い人。というレッテルがついていたようです。
商売の成果を数値としてしっかり残すことは現代であれば正しいことですが、当時は人生の清算(天国or地獄)は神のみぞ知る世界であり、お金に対するジャッジメントに人が踏み込むことはまずいのでは??という葛藤があったことに驚きました。
帳簿をつけるときは神に真実だと誓えるか!?という考え方が面白いです!
・ヨーロッパは文化を絵画に残す
過去に残されている情報は主に、絵画です。
会計を行う人は時代によって尊敬されたり、ひどい印象をもたれていたりします。
文章では表せないような表現を絵画に残すことで鮮明に未来へつなげるということに感動しました。
表紙の右側の男性の苦虫を噛みつぶしたような顔、現代風にいうとスマホでアプリ起動したままでバッテリーが残り5%しかないような顔をしています。その意味も面白いです。
・帳簿と監査はセット
会計は自由にかけてしまうので粉飾が後を絶えません。そのため、会計の報告書(財務諸表)は独立した第三者がしっかりと裏付けを取って正しいと太鼓判を押したものでないと信用できなくなります。
現在では、上場企業や大企業などは監査必須となりましたが、監査されてない財務諸表ほど、たとえ国王が発表するものであっても信用できないものはないのだと思いました。
・この本自体が輸入ものというところで期待が高かったです。
著者は外国人であり、日本に和訳されて輸入されていることを考えると、期待値は高いです。読み応えたっぷりだったので、1日1章でこつこつ読んでいきましたが、読んでいくにつれて読みやすくなっていきます。